6年ぶりらしいですよ、傍聴記書くの。
大学四年生のときには、年間200もの裁判を傍聴し、社会人1年目には営業先に近い裁判所でちょくちょく傍聴していた僕ですが、随分と期間が空いてしまったものです。書いていなかった時期も全く傍聴をしていなかった訳ではないんですが、でもやっぱりここ最近はかなりご無沙汰だった気がします。
それでは、完全に旅ものと化した当ブログですが、当初のメインコンテンツであった裁判傍聴記を久々にお楽しみいただけたら幸いです。
事件名:建造物侵入 …窃盗目的で建物に入る。
事件名:窃盗 …お店の売上を盗む。
被告人:20代半ばの男性
傍聴席:5人
裁判ってのは新件という、その事件について初めて行う裁判の場合、まず人定質問という起訴されている人と目の前に立っている人が同じかという質問をします。そこでいきなり驚いちゃったのが、被告人が平成生まれだったということ。
いや、そりゃあ今や大卒で働いている人でも平成生まれだから、何も驚くことないんだけど、自分がコアに裁判を見ていた22~24歳の10年以上前って、年下が被告人というのもほぼ見たことがなく、ましてや平成生まれなんてのは皆無。
高校球児も平成生まれとなり、今年から全学年2000年以降に生まれた選手だけになったりと、自分が歳をとることを感じる機会っていろいろありますが、まさか裁判所でも自分が歳をとったと感じるとは。裁判長の間でも、平成生まれの被告人の初裁きなど少し話題になっていたりするのでしょうか。俺、もうやったよみたいな感じで。
さて、そんな平成生まれの被告人がどんな事件を起こしたかというと、
昨年の大晦日に、同月26日まで勤めていた元職場である大阪市内のガソリンスタンドの事務所に入り、売上金の3万7千円を窃取。事件当時、店は営業しており、従業員に対し借りていた制服と借りていた携帯を返しに来たと言い、事務所に入って犯行を行ったとのこと。
このガソスタを辞めて、当時は無職でした。
元従業員の盗みって多いんですよね。僕も大学生時代にバイトしていたコンビニに、運良くというのか勤務じゃない日に強盗が入って、後日捕まったんですけどそれも元従業員だったんですよね。今考えても恐い。
そんで、強盗入った翌日で、まだ犯人逮捕されていなかったときに僕、一人で夜勤の予定だったんですよ。さすがに二日連続で強盗も来やしないだろうとは思っていたけど、でもやっぱ一人は嫌だなと思って店長に相談したら「普通くん、強そうだから平気、平気。なんならやっつけちゃってもいいから」とか軽く抜かした店長は今どこにいるのやら。
それでは、事件の細かい部分は被告人質問を追ってみることにしてみましょう。まずは弁護人から。
弁「11月まで淡路島で住み込みの仕事をしていたそうですが、12月の事件当時は大阪にいたのは何故ですか?」
被「12月に観光で大阪に来た際に財布をスられて一文無しになりました。そこで、今思えば怪しかったのですが、生活保護の受給の薦めとアパートを工面してくれる男性に出会い、そこで住むことにしました。」
弁「その勤務していた淡路島の会社には連絡していないようでしたが、それは何故?」
被「私にとって、このようなことは初めての事案であり、非常にパニックになっていたことが挙げられます」
お金をスられて一文無しはともかくとして、そこから会社に連絡せず他県で住み始めるという流れが理解できません。まぁこの理解できなさが裁判と言えばそれまでなのですが。
オヨヨとなっていたところに、声をかけてきた男性に騙されてというのは、色恋沙汰ではよく聞く話ですが、それにしても、この件ではまずは警察でしょう。
もしくは、被告人は過去に警察に嫌な目に遭わされており、警察に相談するという頭がなかったのでは?と思い(思ってはいませんが)、「大阪府警 不祥事」でググってみました。その結果が、こちらです↓(必読)。
いやぁたまらんねぇ。特に「20回にわたり、通勤区間のJR大阪-新三田間で特急券を買わずに特急電車に乗った。車掌に警察手帳を示し「公務です」とうそを言うなどした。」のセコさはポイント高いね。「特急こうのとり」だなさては。
大阪-新三田なんて、有料でない快速電車でも1時間程度の道のりなのに、特急使って通勤とは大したご身分ですこと。どちらかというと、この巡査長を起訴してもらって、こいつの裁判を傍聴したいよ、俺は。
まぁこんな不祥事なんて関係なく、この被告人は黙って警察に相談が得策だったと思いますが。
弁「生活費はどうしたの?」
被「不動産屋に千円を借りました。また、その数日後に生活保護費として14万円をもらいましたが、不動産屋に契約料だ、といろいろ支払うことで残り1万円となりました」
弁「そんなのね、一文無しの人を捕まえて、生活保護の受給を前提に家を斡旋し、お金の大半を持っていくなんて、ロクな人だとは思えないのですが、そうは感じなかった?」
被「思いましたね。ただ私もそのときはお金がなく生活ができないという、生命(せいめい)の危機を感じておりましたので、従うしかありませんでした」
適当に言いくるめられたのか、被告人が適当な性格なのかわかりませんが、家に放り込まれたはいいものの、一月を11,000円で過ごさなきゃいけなくなった被告人。弁護士いわく、生活保護費をせしめてやろうという犯罪はいくつかあるみたいです。
でもなんとか、手元にあったカードゲームを売却したり、新たに見つけたアルバイト先(今回の被害店舗)から給料を前借りすることで食いつないでいく被告人。でも、そこも一月も経たずに辞めてしまいます。
弁「高校卒業してから五年間、ガソリンスタンドの正社員として働いていましたね。なにか資格を持っていたりしますか?」
被「キーパーコーディングの1級です。車の塗装技術に関する資格です」
弁「その会社はどうして辞めたの?」
被「上司からのいじめ2件と腕を負傷したもので」
弁「今回の被害店舗となった、直前まで働いていた店舗はどうして辞めたの?」
被「他の従業員との人間関係を構築する上で困難に感じることが多く、辞めれば?などと言われ」
弁「関係性が悪いというのはどういった原因が?」
被「従業員の売上意識が低いということです。私もプロとしての矜持がありますので、そのような環境で働きたくないという思いがありまして。」
なんかこの俺のイライラ伝わらないかな。
別に間違ったこと言ってないんだけどさ、プライドをわざわざ「矜持」って言ってみたり、人付き合いがうまくいってないのを「人間関係を構築する上で困難に感じることが多く」とか、いじめがあったでいいのに「2件」とかわざわざその部分をハキハキと喋り、私はしっかりした人間です、みたいな感じなのがすげぇ腹立つ。
なんならもっとの前の方で「生命(せいめい)の危機」って言ったり、「事案」って言葉をわざわざ使う辺りから俺は怪しいと思ってたんだからな!あ~、ここの感情伝わってほしいなぁ。
弁護士さんは必死に、被告人はスキルがあって、プロとしてのプライド(とあえて言う)がある故にたまたま仕事をしていないだけで、きちんと社会で仕事する能力はありますよと言いたいんでしょうが、被告人の口から出る端々の言葉から、いやこいつのその性格どうにかしない限りどうにもならんと思うけど、という雰囲気が滲み出てしまいます。
それでは、ここから検察官より、もう少し掘り下げてもらいましょう。
検「借金が250万円あると調べでは供述しているのですが、これはどういうものですか?」
被「消費者金融から100万円、クレジットカードの未払いが50万円、あと“押し出し”で100万円ほどです」
検「すみません、“押し出し”というのはなんですか?」
被「借金をしていた友人から、倍付けで返せと脅されることです」
友人もロクな奴いねぇなという思いと同時にやはり気になるのは倍付を請求するという「借金の押し出し」というもの。初めて聞きました。
一般的な言葉なのかなと思い「借金 押し出し」で検索したら
こんな結果だったので、一般的ではないんだと思います。阪神さん…。
検「クレジットカードでは、どういったものを購入していたのですか?」
被「ゲーム機や車のパーツ、車の燃料です」
検「友人からした借金はどういう理由からですか?」
被「一時的な困窮状態にあり、止むを得ず借りました。」
検「取り調べでは、車検や風俗店に使ったと言っていたようですが」
被「車が無いと生活ができない環境にありましたし、風俗は日々の仕事の疲れもありますし先輩などに連れられて行くこともありました。」(中略)
検「盗んだ3万7千円は何に使ったんですか?」
被「食費とタバコ代です」
検「タバコ代?限られたお金の中でもったいないと思わなかったの?」
被「止めようと思いましたが、タバコを止めると食費が余計にかかるのと判断したので」
俺、コイツ超~嫌い。
生活を維持するために車にお金をかけるのもいいですよ、日々ストレスがたまって風俗店へということもあるでしょう、でも、それは限られたお金の中でやらなきゃいかんことで、返すあての無い借金をしてすることじゃないですよね。
確かにタバコを止めたら、ご飯が美味しくなって太っちゃったなんて話も聞きます。でも、それは食に制限設けなくていい人の話でしょ。タバコ止めたからって、その分食べずに我慢しなさいよ。
この人さぁ、自分の考えについては正しい、間違いないと思っているくせに、その考えが甚だ見当違いなんだよね。
それでは最後に裁判長からの質問です。
裁「事件を起こしたのは深夜2時だけど、それまでは何をしていたの?」
被「自宅で休んでいましたり、ゲームセンターで時間を潰していました」
裁「なんでお金ないのに、わざわざゲームセンターなんて行っちゃうの?」
被「家には物が何もありませんので、時間を潰すのに使うことがあります」
あーそうですか、そうですか。事件直前までゲーセンにいるって、生活に困窮しているのを犯行理由としているのにありえないと思いますが、いちいち突っ込んでられないので無視します。
裁「事件現場には、最初から盗みに行くつもりでいったの?」
被「はい、そうです」
裁「制服を持って行ったのは、そうすれば事務所に入りやすいと思ったから?」
被「いいえ、違います」
裁「あれ、そうなの?じゃあ、どうして制服を持って行ったのですか?」
被「返さなくてはいけないものでしたので、ついでに返そうと思い持っていきました」
窃盗のついでに制服返却?制服返却のついでに窃盗?って、どっちでもいいわ!!
そりゃあ制服貸与だったら返さなきゃいかんだろうけど、そのタイミングで売上金持って行かれるんだったら、店の損得合わなさすぎるwwwそれなら制服返さんでいいわってなるわ。
裁「お金は苦しかったんじゃないの?」
被「はい」
裁「どうしてお金ないのに、仕事辞めるって決断しちゃうの?自分の首絞めているってわかるよね?」
被「もちろんわかっておりますが、私にもプロとしての矜持がありますので」
オレ「(ちっ)」心の舌打ち
裁「発想が非常にバランス悪いんですよね。仕事のプロとしての誇りは持っているけど、人様のお金を盗むという罪悪感は持ち合わせていないの?」
被「店長に、これ以上お金を借りるわけにはいかないという思いが強かったので」
さっきから、店の損得はよwww
なーんで、さっきから自分をいいように言うのよ。店長にこれ以上借りられないから、店の金盗るってどういう善悪の基準なんよ。
この時点で、ブログ掲載は確定していたのですが、ここからまた未体験のことが起きます。
検察官の求刑は一年六月。
初犯なので、来週あたりの裁判で執行猶予がつく判決が出るんでしょうなと思っていたら、裁判長から意外な言葉が。
その日の審議が終わって判決まで出ていないと、その場で裁判長と弁護人、検察官が次の日どりをあーでもない、こーでもないとやりとりするのですが、
裁「弁護人、次の判決では執行猶予判決になると思うのですが、」
オレ「(わかってるけど、言っちゃうんだwww)」
裁「そのあと、被告人は住居などどうするのでしょうか」
弁「いや、あのぉ…」
裁「被告人、執行猶予という判決が下れば、即服役するということでなく、釈放され外で生活することができます。その場合、事件時に住んでいた家はすでに解約されているようですが、どこに住みますか?」
被「漫画喫茶など、出来るだけお金がかからないようにしたいと思います」
裁「弁護人、被告人はこのように言っていますが、恐らくまたすぐ金銭面で苦労すると思います。なので、その後の環境について被告人とあらかじめよく話し合うようにしてください。再犯の可能性を出来るだけ低くすることも重要なことだと思うので」
と弁護人に指示。
裁判長の職務上、ここまでするのはどうなのかという法曹関係者からの突っ込みも入るかもしれませんが、このブログ上ではいい話や~で済まそうと思います。こういう裁判長がいたっていいじゃないですか。
裁判所ってのは、別に裁判を適切に行うだけの場所じゃないと思うんです。
仕事だからと人を罪に問うのでも、守るのでも、裁くのでなく、犯罪が起きないような社会を目指すための役割をも担っていると思います。
やっぱそういうところが、人間が生活している社会を凝縮している感じがあって、裁判が好きなところなんだよなぁと改めて感じてしまいました。また時間を作れたら行きたいと思います。
とりあえず次回からはまた旅の話だけどね。